天井のCCTVは、たしかに現場を映しています。ただ、クレームが来た一件をすぐ取り出せるかは、別の話です。

現場の声をお伝えするリアルログです。今日お話しするのは、天井に据えられたCCTVでお客様のクレームに対応してきた物流現場のことです。
多くの現場には、すでに天井にCCTVが据えられています。それでも出荷クレームが入ると、担当者はその一件をすぐには取り出せません。CCTVは倉庫全体を広く見渡すために据えられていて、送り状番号ごとの梱包や検品を狙って残しているわけではないからです。だから映ってはいても、必要な一件を探し出すのに時間がかかります。この記事では、天井のCCTVだけでは出荷クレーム対応が回りにくい理由と、梱包・検品・出荷を送り状番号ごとに動画で記録して必要なときにすぐ取り出すという考え方を、現場の視点で見ていきます。
何年ものあいだ、大小さまざまな物流現場に出入りしていると、規模も業種も違うのに、驚くほど同じように繰り返される言葉があります。"CCTVで見てはいるのですが…"で始まる話です。最近になって急に増えた悩みではありません。CCTVでクレーム対応をまかなってきた現場なら、長く付き合ってきた、それでいてなかなか手をつけられずにいる場所です。
CCTVを最初に設置するとき、その目的はたいてい安全と防犯です。人が怪我をしないか、物がなくならないか、車両の動線に問題がないかを見渡すためのものです。ですからカメラは作業台一つではなく、倉庫全体を広く収めるように、天井の高い位置へ、区画単位で据えられます。防犯カメラがもともと得意とするのは、この広い範囲を見張ることです。
ところが出荷クレームの対応で必要になるのは、それとは別の視線です。どの送り状番号の荷物を、誰が、どんな状態で梱包して送り出したのか。出荷も、入荷も、返品も、突き詰めれば一件ずつ確かめることになります。倉庫全体を俯瞰する視線は、この一件という単位を狙って残しているわけではありません。CCTVを責める話ではなく、設計された目的がもともと違うのです。

実際のわずらわしさは、クレームが入った瞬間から始まります。お客様から"届いたものが違う"という問い合わせが入っても、担当者はその注文を画面からすぐに呼び出せません。送り状番号で探すのではなく、その一件が出ていったであろう時間帯に見当をつけて、録画を巻き戻さなければならないからです。
さまざまな現場を回るコンサルタントが、そろって指摘するのがこの場面です。打ち合わせで担当者が"CCTVで見てはいるのですが…"と言葉を濁すと、その先に続く話は、たいてい決まっています。映っていそうな時間に見当をつけ、録画を一つずつ再生して該当の場面を探すうちに、慣れた担当者でさえ、じわじわと時間を取られていきます。しかもこの探し方は、その人の勘と記憶に頼りがちで、担当者が替わると同じようには辿れない、属人化した作業になりやすいのです。
見つけたあとにも、まだ仕事は残ります。その区間だけを切り出して、お客様に送る資料として整え直さなければなりません。さらに現場では、映ってはいたのに肝心のところが確かめられない、という声もよく聞きます。伝票の文字が小さくて読めない、扱う商品が小さくて判別できない、問い合わせが来た頃には保存期間を過ぎて映像が消えていた、といった具合です。クレーム一件ごとに、巻き戻し、探し、切り出す。処理そのものよりも、処理したという事実を取り出して見せることに、より多くの手がかかります。
そこで自然と出てくる問いがあります。もっとよいカメラに替えればよいのではないか、というものです。現場で幾度となく受ける質問ですが、答えは思うほど単純ではありません。
防犯カメラは、倉庫全体を収めようと高い位置に据えられている場合が多いものです。画素数を上げても、広く見渡す視線が、そのまま一件ずつの証拠に向いた視線になるわけではありません。俯瞰の画角のまま解像度だけを上げると、データは重くなる一方で、必要な一件を探す手間はほとんど変わらないこともあります。
管理の負担を分けるのは、カメラのスペックそのものではありません。撮られた映像が送り状番号など出荷の単位に紐づいていて、必要な瞬間にその一件だけをすぐ取り出せるかどうかです。使ってきた機材をそのまま残すにせよ、新たに重ねるにせよ、結局はここで分かれます。
実際に映像で記録を残そうと考えたとき、現場が先に確かめておくと迷いにくい点を三つ挙げておきます。特定の製品の話ではなく、どの仕組みを検討するときにも当てはまる見方です。
一つ目は、撮る範囲が現場のレイアウトに合っているかです。自動化ラインと手作業の梱包台とでは、カメラが要る場所も画角も変わります。二つ目は、伝票の文字やラベル、扱う商品の細部まで判別できる画質かどうかです。全体はきれいに映っても、肝心の一件が読めなければ証拠として使えません。三つ目は、必要な場面をどれだけ速く探し出せるかです。時間帯を頼りに巻き戻すのか、送り状番号でその一件を直接呼び出せるのか。この三つ目が、日々のクレーム対応にかかる時間をいちばん大きく左右します。
順序としては、機材のスペックを比べる前に、この三つを自分の現場に当てて考えるほうが近道です。どんなに画質がよくても、探せなければ日々の対応は軽くならないからです。
このわずらわしさは、規模を問わず運用のハードルになります。ただ、出荷量が増えていく現場では、その重みが特にはっきりとあらわれます。
売る量が増えれば、出荷クレームも荷主や取引先からの問い合わせも一緒に増えます。その分だけ、巻き戻して探して整える対応のリソースも膨らみます。速く伸びるブランドの物流を扱う現場ほど、この点を前もって見据える姿をよく見かけます。今はCCTVでどうにか凌げていても、これから物量がさらに増えることを見通すと、話が変わってくるからです。母数が大きくなるほど、物流のCSも、返品も、補償も一緒に大きくなります。その時になって抱え込むより、前もって仕組みを整えておこうという判断です。
とりわけ、ラグジュアリーやファッションのように客単価の高い商品を扱う現場ほど、計算が早くなります。クレーム一件にかかる補償費が大きく、巻き戻して探す人の時間まで人件費として積み上がるからです。月あたりの出荷件数とクレーム比率、対応にかかる時間、返品と補償に埋もれる費用を、一か所に並べてみます。すると、今のやり方を続ける費用が、仕組みを整える費用を上回る地点が見えてきます。成長していく企業や物流センターほど、別のやり方を考えることになる理由です。

そのため、現場で関心が移っていく先ははっきりしています。ただ場面を残すだけにとどまらず、必要な瞬間にすぐ取り出して使えるかどうかです。
クレームが入ったときに、時間に見当をつけることなく、送り状番号だけでその一件の梱包場面をすぐ呼び出せるなら、巻き戻して探す過程そのものが要らなくなります。見つけた場面を別に整え直さず、元のままお客様にお渡しできるなら、切り出す手直しも消えます。出荷だけでなく返品まで一件ずつ残しておけば、"どんな状態で行き来したのか"をめぐるやり取りも減ります。誰が、何を、いくつ梱包したのかが、送り状番号から辿れるからです。
もう一歩進めると、こうして残した場面は、クレーム対応だけに使われるものではありません。CSは問い合わせに答えるときの根拠として使い、お客様が商品を受け取る瞬間を見せる接点にもなります。同じ記録を物流チームの中だけにとどめず、会社の単位に引き上げると、守るために残した資料が、荷主やお客様の前に取り出せる資産へと変わっていきます。物流の現場で"信頼"という言葉が繰り返し語られるのは、このためです。
映像で記録を残すという話をすると、現場でいつも似た質問をいただきます。よく受けるものを、そのままお答えします。
Q. 出荷クレームが入ったとき、まず何を確かめればよいですか。
まず確かめたいのは、いつ、誰が、どの送り状番号の荷物を検品・梱包したのかという作業の記録です。天井のCCTVの映像だけでは、特定の一件を素早く探し出すのが難しく、確認までに時間がかかることがあります。
Q. 天井の防犯カメラだけでは、なぜ出荷クレームに対応しきれないのですか。
天井のカメラは倉庫全体を俯瞰して記録するため、特定の送り状番号の梱包・検品だけを素早く絞り込みにくいからです。広角の映像から該当の作業員と時刻を探す手間がかかり、対応が遅れる一因になります。
Q. 誤出荷や梱包ミスのクレームに、動画記録はどう役立ちますか。
出荷・梱包・検品を送り状番号ごとに動画で残しておくと、クレームが入った際にその番号を検索するだけで、実際にどう梱包・検品されたかをすぐ確認できます。原因の特定と回答までの時間を大きく縮められます。
Q. 出荷や梱包の証拠は、どう残すのが望ましいですか。
送り状番号など出荷の単位に紐づけて動画または画像で記録し、必要なときにすぐ検索・再生できる状態で保存しておくのが望ましいと言えます。倉庫全体を映す防犯カメラだけでなく、作業単位の記録を組み合わせると、確認の精度と速さが上がります。
Q. EC事業者やCS担当者にとって、動画記録を持つ利点は何ですか。
"商品が入っていなかった""違う商品が届いた"といった問い合わせに対し、送り状番号から該当の梱包・出荷映像をすぐ確認して答えられる点です。対応の時間が短くなるだけでなく、根拠を示して説明できるため、お客様への対応の質も上がります。
この問題を物流チームの中だけで見ていると、答えはいつもカメラを替えるかどうかで止まります。何年も現場に出入りして確かめてきたのは、同じ記録を会社の単位に引き上げた瞬間、問いが変わるということです。どこに撮影が付くか、誰が何を見られるようにするかは、自動化設備が回るセンターか手作業の作業台か、物流を委託しているか自社倉庫かによって変わります。ですから、どう撮るかではなく、どこまで使うかを先に決めてこそ、その先が順を追って解けていきます。
天井の防犯カメラは、倉庫全体を見張るという役目では、これからも力を発揮します。ただ、出荷クレームのように一件ずつを送り状番号で辿る場面では、もう一つの記録があると現場がずいぶん楽になります。送り状番号に紐づけて梱包の瞬間を残し、必要な一件だけをすぐ取り出す。リアルパッキングの映像記録は、既存のラインや作業の流れを止めないまま、WMSと連携させてこの一件を辿れるようにするための仕組みです。天井のカメラで全体を見張りながら、その下で一件ずつを送り状番号で残しておく。二つの記録が役割を分け合えば、クレーム対応の現場は、探すことよりも見せることに時間を使えるようになります。