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楽天市場の売上の7割がイベント期間に集中、平常期の売上基盤は誰が育てるのか

2026-05-27

年間日数の48%、年間売上の71%、翌月の25%減少。これが、楽天市場に出店する50店舗以上の2年分のデータが描いた、店舗運営の売上構造の輪郭です。

EC運営支援を専門とするコンサルティング会社ジャグー株式会社が、2026年5月27日に公開した独自調査レポートで、楽天市場の出店店舗が抱える売上構造の特徴が、具体的な数字とともに示されました。年間の半分に満たない期間に売上の約7割が集中し、その反動として翌月の売上が落ち込む。それが、楽天市場における店舗運営の標準的なリズムになりつつあるという内容です。

問題はここからです。同じ業界調査の中で、イベント期間の売上比率が65%以下にとどまる店舗の年間成長率の中央値はプラス12.4%、65%以上の店舗はプラス4.0%でした。短期の売上最大化と、年間を通じた事業の成長が、必ずしも同じ向きを向いていないことが、店舗グループ別の数字としてはっきりと示された形です。

本記事では、この業界レポートが示した数字を読み解いたうえで、楽天市場をはじめとするECモール出店事業者および自社EC運営事業者が、次の四半期に自社の売上データで測定すべき三つの項目を順を追って整理します。

数字が示す、楽天市場の売上構造

EC運営支援を行うジャグー社は2026年5月27日、楽天市場に出店する50店舗以上を対象にした2年間(2024年1月から2025年12月)の売上データ分析結果を公開しました。日次の売上データを起点に、年間売上のうちイベント期間に発生した売上の比率を算出した独自調査です。

調査結果では、イベント期間の売上比率の中央値は70.9%、平均値は71.4%でした。イベントの開催日数は年間およそ176日、年間の約48%にあたります。日数では年間の約半分、売上では約7割。1日あたりに換算すると、イベント期間の1日売上は平常期の1日売上の2.75倍に達しています。

楽天スーパーSALEが開催された翌月の売上にも、はっきりとした傾向が出ています。3月のSALE翌月にあたる4月の売上は前月比マイナス25.1%、6月のSALE翌月の7月はマイナス20.8%、9月のSALE翌月の10月はマイナス28.6%、12月のSALE翌月の1月はマイナス27.2%。年4回のSALEのたびに、翌月の売上が平均で約25%落ち込むリズムが、店舗運営の前提として観測されました。

イベント別の1日あたりの平常期比売上倍率も比較されています。ブラックフライデーが5.67倍、楽天スーパーSALEが5.08倍、ブランドデーが3.07倍、大感謝祭が3.04倍、お買い物マラソンが2.28倍、楽天イーグルス感謝祭が1.82倍。倍率の幅は広く、平常期に対する各イベントの売上の立ち上がり方が、イベント種別ごとに大きく異なっていることが分かります。

特に注目すべきは、お買い物マラソンの位置づけです。年間およそ120日にわたって開催され、年間売上の約4割を占めています。日数で見れば、楽天市場に出店する店舗にとっての平常期と呼べる期間は、すでに極めて限られた状態にあるということです。

同じ楽天市場の中で分かれる、二つのタイプの店舗

同じ調査では、イベント期間の売上比率ごとに店舗をグループ分けし、年間成長率(前年比)の中央値も算出しています。

イベント期間の売上比率が65%以下の店舗は、年間成長率の中央値がプラス12.4%。これに対し、65%以上の店舗はプラス4.0%。およそ3倍の差です。

両グループは同じ楽天市場、同じイベントカレンダー、同じプラットフォーム機能の上に立っています。違いは、平常期にも一定の売上が立ち、年間を通じた集客と購買が分散している店舗と、イベント期間に集中して購買を集める店舗のどちらに自社の運営の重心を寄せているかという、運営側の重点の置き方の違いに見えます。

この差は、運営判断の質を示すと同時に、平常期に投資できる余力の差としても表れます。イベント期間に依存する店舗ほど、平常期の検索流入、CRM施策、再購買導線などへの投資が後回しになりやすく、その結果、平常期に売上が立ちにくい構造が定着するという循環が起こりやすくなります。

イベント依存構造が、平常期の売上に投げかける問い

この数字が伝えているのは、楽天市場に出店する店舗運営者にとって、自社の売上構造がイベント期間の山と平常期の谷のどちらに重心を置いているかを、改めて確認するタイミングに来ているということです。

イベント期間中の広告投資は、投資対効果が高いタイミングであることが多く、ここに予算を寄せる判断自体は妥当な選択です。一方で、平常期に「誰が、なぜ買っているのか」が育っていない店舗は、イベント期間外の集客を常に外部要因に依存する状態に置かれます。

そしてこの構造は、楽天市場だけの話ではありません。Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECサイト、それぞれのプラットフォームにおいても、イベントやキャンペーン期間に売上が偏る傾向は強まっています。プラットフォームごとに数字の出方は違っても、平常期の売上基盤がどこにあるかを問い直すこと自体は、日本国内のEC事業者全体に共通する論点になりつつあります。

次の四半期、店舗運営者が自社で測定する三つの項目

ここからが、本記事の中心です。業界レポートの数字を読むだけでは、自社の店舗運営は変わりません。次の四半期に向けて、ECモール出店事業者および自社EC運営事業者が、自社の数字で測定すべき三つの項目を、順を追って整理しておきます。

測定 1:自社のイベント売上比率を測る

まず必要なのは、自店舗の最新12か月の日次売上データです。これを用意したうえで、対象モールの大型イベントの開催日を年間カレンダーに重ね、それぞれのイベント期間中に発生した売上を合計します。年間売上に占めるその比率が、自店舗のイベント売上比率です。

楽天市場であれば、楽天スーパーSALE、お買い物マラソン、ブラックフライデー、大感謝祭、ブランドデー、楽天イーグルス感謝祭が主要対象になります。Amazonであればプライムデーとブラックフライデー、Yahoo!ショッピングであればPayPay祭やボーナスストアプログラムが該当します。自社ECサイトを併用している場合は、自社が独自に開催する大型キャンペーン期間も対象に加えます。

算出した比率が業界調査の中央値である70%前後にあるなら、自店舗は業界平均と同じ売上構造に位置していると見ることができます。65%以下であれば、平常期にも一定の売上基盤を持っているグループに属している可能性が高く、80%を超えているなら、イベント以外で売れる仕組みが極端に弱くなっている状態と読み取ることができます。重要なのは比率の高低を競うことではなく、自店舗が今どの位置に立っているのかを、業界調査の数字と並べて客観的に確認することです。

この比率を出すうえで気をつけたい点は、対象イベントの定義をぶれさせないことです。たとえばお買い物マラソンは年間120日と長期にわたるため、「マラソンの開催日を全部入れるのか、買い回りで実際に売上が立った日だけ入れるのか」で比率の値が変わります。自社の社内で集計ルールを一度決めたら、四半期ごとに同じ定義で並べ続けるのが望ましい運用です。

測定 2:イベント翌月の売上減少パターンを認識する

二つ目の測定は、自店舗の「イベント翌月の売上動向」を時系列で並べる作業です。楽天スーパーSALEの3月・6月・9月・12月のそれぞれの翌月にあたる4月・7月・10月・1月の売上を、前年同月および直近の平常月(イベントが少なかった月)の売上と並べて比較します。

業界調査の数字では、楽天スーパーSALE翌月の平均減少率はマイナス20%からマイナス28%の間でした。自店舗の翌月減少率が業界平均と同水準であれば、需要の先取りによる谷が標準的な範囲に収まっていると判断できます。一方で、減少率が30%を超えているようであれば、イベント期間に需要を消化しすぎていて、平常期の購買リズムを自店舗側で作れていない可能性が高まります。

この測定の意味は、単に「翌月の売上が下がっている」という現象を確認することではありません。平常期に新規顧客や再購買顧客を作る仕組みが、自店舗にどれだけ整っているかを、翌月売上という形で見ているということです。翌月の売上が大きく落ち込む店舗は、イベント期間に集中的に購買した顧客を、翌月以降の再購買へつなげる導線を持っていないか、持っていても機能していないことを意味します。

翌月減少率を見るときは、SALE翌月の数値だけでなく、SALE翌々月までを並べて二か月の回復曲線を見ると、より実態が分かります。翌月に大きく落ち込んでも、翌々月に基準月の水準まで戻る店舗と、二か月にわたって谷が続く店舗では、平常期の購買リズムの強さが異なります。

測定 3:平常期の売上インフラへの投資比率を再配分する

三つ目の測定は、四半期予算の配分先を「イベント期間の打ち上げ施策」と「平常期の売上インフラ」に切り分け、現状の投資比率を可視化する作業です。

ここで言う平常期の売上インフラとは、検索流入を生み続ける商品ページの整備と検索エンジン最適化、再購買を生むCRM施策(メール、LINE、会員プログラム、ポイント運用)、在庫の回転を支える発注計画と倉庫運用、そして再購買意欲を支える出荷品質と顧客対応の信頼性を指します。これらは短期の売上ピークを作る施策ではありません。しかし、平常期に売上の谷ができにくい店舗を作る基盤は、ここにしかありません。

四半期予算の配分を見直す際には、たとえば「広告予算のうち何%がイベント期間中の打ち上げに、何%が平常期の検索流入維持に向かっているか」、「CRM施策(メール・LINE・会員施策・ポイント運用)に充てている月次の時間と人手はどれだけあるか」、「出荷品質や同梱物の改善、再購買導線の構築に四半期でどのくらいのリソースが向かっているか」を、具体的な数字で並べると、判断材料になります。

ここでつけ加えておきたいのは、「平常期インフラへの投資が足りているか」という問いを、抽象的な議論で終わらせないための運用です。各施策にひとつずつ、四半期で動かす指標を決めておくと、現状把握が一段はっきりします。商品ページの整備であれば「四半期で更新する商品ページ数」、CRM施策であれば「メール・LINE配信回数と再購買率」、出荷品質であれば「誤出荷率と問い合わせ対応時間」、再購買導線であれば「初回購入から30日以内の再購買率」が、目に見える形で動かす対象になります。これらを四半期の最初に決めて、最後に並べてみるだけで、平常期インフラへの投資が動いたか動いていないかが、社内の共通言語として残ります。

業界調査で確認されたとおり、イベント売上比率65%以下の店舗の年間成長率は、65%以上の店舗の約3倍でした。この差は、平常期のインフラに投資する余力をどれだけ確保しているかという、運営の重点の置き方の違いとして、数字に表れているものと読み取ることができます。

イベントを生かしながら、平常期に売る店舗を作る

業界レポートが示した「イベント売上の7割集中」という数字は、楽天市場の店舗群を平均で見た一断面にすぎません。自店舗で同じ測定を行えば、答えは店舗ごとに異なります。

次の四半期の運営会議に乗せるべき議題は、「次のイベントでどれだけ売上を伸ばすか」だけではなく、「平常期に誰が、なぜ買う店舗を作るか」という問いです。数字はすでに自店舗の売上データの中にあり、次の四半期に向けた運営資源の配分は、その数字の上にしか組み立てられません。

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